軽減税率と外食のお話

 季節は秋になりました。大阪もだいぶんと涼しくなってきて、朝晩は少し肌寒く感じる日もあります。
 私たち税理士もいわゆる下半期(10月~3月)に入り、気分を新たに頑張っていこうというところです。

 さてさて、近頃世間を騒がしております「軽減税率」。10月1日から消費税が10%になりましたが、生活に必要な特定の品目については、課税率は他の品目に比べて低く定め(とは言ってもこれまで8%だったものの据え置きなんですけど)られています。生活に必要な特定の品目、というところがポイントで、お酒や外食、医薬品等を除いた飲料食品や定期購読の契約をした新聞等が主な対象になります。私の大好きなお酒がこの対象になっていないのは少し……、いやいや、ものすごく残念な事ですけれども、要点としては「生活に必要であるかそうでないか」というところですね。
 「酒なんざ飲まねえでも生活できるだろ」と言われると泣きたくなりますが……。


  最近ちょっとした騒ぎの素になっているのが「外食」です。
 例えば、コンビニでパンを買ったとき、消費税はどのように計算されるのでしょうか?
 基本的には「パンを家に持って帰ってから食べる」と考えた場合、税率は8%になります。
 で、買った後、コンビニに併設されているイートインコーナーでそのパンを食べた場合、どうなるでしょう?家で食べていないわけですからこれは外食に当たります。でも、本来であれば10%で計算されなければならないところを8%で会計を済ませているわけですから、消費者にとってみれば2%得したことになり、税金を正しく納めていないことになるのでしょうか?
 巷では、イートインスペースで食べている人を見張っている「コンビニポリス」だの「正義マン」だのが噂されておりますが、このあたり(税金を正しく納めていない?こと)についてはどう考えるべきなんでしょうか?
 基本的には、レジで会計をする段階で、お店の方から「持ち帰られますか?それともイートインスペースで召し上がられますか?」と聞かれて、持ち帰って食べることを選択した場合税率は8%になり、イートインスペースで食べると答えた場合は10%で計算されます。すなわち事業者(この場合はコンビニ)が客に飲食料品を譲渡した時点で軽減税率が適用されるかどうか判断される、ということになります。

 


 「家に持って帰って食べます」と嘘をつき、イートインスペースで食べることを常習的に繰り返していた場合、詐欺……とまでは言いませんが、問題視される可能性は高いでしょうね。とはいえ、買う時点では家で食べようと思っていたけど、帰り際にスペースが目に入ってそこで食べていこうと考えが変わった場合、自己申告しなければならないものでしょうか?……そのあたりは各自の自己判断というものに任されるということになるんじゃないかな、と思います。心苦しく思うのであればお店に申告すべきでしょう。2%を惜しんだばかりに、見知らぬ誰かから難癖をつけられることも(もしかしたら)あるかもしれません。それは税理士の私にもわかりません。
 ただ、レジで持ち帰りかここで食べていくか尋ねられた場合は、その時点での予定をはっきりさせておいた方が無難かもしれませんね。
 消費者の皆さんだけでなく、事業者(お店)の方も大変です。この軽減税率に対応したレジ機器を導入している場合であれば、記録には残りますが「やっぱりスペースで食べて帰ります」と正直にお客さんから申し出があったときはレジ処理をやり直さなければいけません。正確に消費税を申告(お客さんから預かった消費税分をまとめて納める)するためには毎日、事細かに履歴を取らないといけないかもしれませんが、それはそれで大変ですね。


 ちなみに、事業者(コンビニ)の場合、どう考えるべきでしょうか?お店としては損をしていることになっているのでしょうか? この辺りについては、私見ですが、理論上は損も得もしていないのではないか、と考えられます。軽減税率に対応したレジ機器の導入などでコストは掛かっているでしょうが、その点については一旦脇に措いてください。

 基本的には、お客さん(消費者)が支払った消費税は、事業者がいったん預かってからまとめて納める、という考え方ですので、事業者としてはプラスもマイナスもななく、商品のやり取りそのものについては、事業者が特段何かの損をしているわけではないと思います。理論上は……。

 だからといって、イートスペースで食べるという申し出があったにもかかわらず、本来は10%で計算すべきところを全ての取引を8%で計算して申告して良い、というわけじゃありませんよ。要するに取引を行う時点で、消費税が8%となるか10%となるかを互いに確認し、消費者も事業者も互いに適正な金額を納めるべきではないか、と思うわけです。

 

 ただまあ、どうにも、軽減税率は消費者も事業者も気を遣う制度のような気がします。色々と大変かもしれません。
 とはいえ、消費税も立派な財源の一つです。納めた税金がどんな使われ方をしているのか、私たちも国民の立場できちんと調べたり、考えたりするきっかけになれば、と私は思います。
 事業者の中で、軽減税率についてお悩みの方はぜひ当事務所へご相談ください。
(軽減税率の対象にはなりませんが)お酒でも一緒に飲みながら解決していきましょう。

 

2019年10月05日