課税事業者選択届出書

 令和元年(2019年)10月から消費税が10%となりますが、事業者にとってもかなり影響があります。飲食業を始める場合にも多少関わってきますので、本項ではそれについて触れてみましょう。
 さて、事業を開始して間もない人は、原則として「免税事業者」となります。……いきなり免税と言われても「何のこっちゃねん?」となるかもしれませんが、簡単に言えば、基準期間の売上高が1,000万円にならない限りは、その事業者は消費税を国に納める必要はありません。そもそもが消費税という概念を免除されていますから。
 免税事業者の逆が「課税事業者」ですが、この課税事業者になれば、お客さんから預かった消費税を国に納めることになります。例えば、ある飲食店で、年間の売上が220万円(うち消費税20万円)、経費が110万円(うち消費税10万円)だったとします。課税事業者だった場合、お客さんから預かった消費税20万円からお店の経費にかかった消費税10万円を差し引き、残りの10万円を消費税として、確定申告という形で国に納めることになります。……が、免税事業者の場合はこの10万円を納める必要はありません。実際のところ、かなり得をしていますよね。

 免税事業者の方が得じゃない?と思われるでしょうが、これは状況によります。特に、事業を始めて、設備や内装などの初期投資にかなりの金額をかけた場合、逆に作用することがあります。例えば、先ほどのケースで、年間の売上が220万円(うち消費税20万円)であったものの、店内のエアコンや大型冷蔵庫の整備等を含めて、年間の経費が550万円(うち消費税50万円)かかった場合を考えてみましょう。免税事業者の場合、そもそも消費税の概念がありませんから何も納める必要はありません。逆に、課税事業者の場合はどうでしょう?先ほどとは異なり、計算式は次のようになります。

(お客さんから預かった消費税)20万円 - (年間の経費にかかった消費税)50万円
  = マイナス30万円

 ……お分かりでしょうか?「マイナス30万円の消費税を納める」ということは、言い換えれば「消費税30万円の還付がある」ということになりますので、確定申告を行うことで30万円戻ってくることになります。免税事業者は損も得もありませんが、課税事業者であれば還付を受けることができます。
 課税事業者となるために必要なのが、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出するという方法です。特に飲食業の場合、初年度は売上よりも初期投資に費用がかかることが予想されますので、この制度を利用してもいいのかもしれません。ただし、良いことばかりではなく、一度この届出書を提出すると、少なくとも2年間は免税事業者に戻ることはできませんので、その点だけはご注意ください。
 当事務所では状況などをヒアリングして、いずれの方法が良いかシミュレーションを行うことも可能ですので、ぜひご覧ください。